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「損益分岐点の視点でものを考える技術者の養成」2005年度中田所長目標
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■  ローコスト・オートメーション(LCA)とは何か

ローコスト・オートメーション(LCA)とは何か

ローコスト・オートメーションは業界用語としては、一般的に使用されて久しいが、定義としては確立されていないため、ローコスト(Low Cast)の訳語、経費、費用の安いこと、オートメーション(Automation)の訳語、機器、プラントの運転、操作、調整、制御、管理および情報処理などを自動的に行う機械装置または機構のこと。を直訳、簡略化して、以下の定義を使用する。

 「経費、費用のかからない自動化機械、装置」

経営コストの中で、多大の比率を占めているものは、大企業、中小企業を問わず、人件費と設備費(減価償却費)である。ものづくり現場において、人件費の節約を計ろうとすれば、機械に依存しなければならないが、機械設備が高ければ、省人化しても、コストが下らない。

設備が大型化すれば、これまでの敷地で間に合わず、新しく土地購入の投資が必要になり、結局、コストアップになる場合も考えられる。従って、ローコスト・オートメーションの開発が急務になっているのである。

① 種類と生産数量による機械装置の分類
一般的に、機械は部品の種類と生産数量によって、どれを採用するかを決め、導入されてきた。自動車産業のように、種類が少なく生産量の多いものはトランスファーマシン(Transfer Machine)、これより、種類が多く、生産量が少ないものは専用機、次はFMS、FMC、種類が極端に多く、生産長が25個/月レベルの多品種少量生産の場合はNC工作機を使用するという目安になる。この相関をグラフにすれば図4のようになる。

最近の傾向は、顧客ニーズの多様化による多品種少量生産であり、機械と人間の住み分けを工夫しなければ、コストアップになる場面も多く、生産担当者の頭脳をいかに上手に使うかによって勝敗が決まる。

② 温故知新の自動化設計
現代はコンピュータ全盛時代であり、機械設備は自動制御、コンピュータを組込まないと機械ではないような風潮が見られるのは少し問題である。
また、機械設備に多用される要素、ボルト、ナット、ビス類、軸受(bearing)、オイルシール、Oリングを始め、空圧、油圧シリンダ、電磁弁、ポンプ、空気三点セット(air control unit)、電動機、ポンプ、シーケンサ、リミットスイッチ各種、押釦等々はすべて専門の製造メーカがJIS、ISO、DIN、BSなどの規格により、標準品として市場に供給されている。

しかも、これら各要素はカタログによって、あるいは電子カタログ(CD-ROM)によって簡単に選択し、購入できるため設計者には強い味方などである。
このような利便な傾向は、ローコスト自動化の視点で評価すると大きな問題を抱えていることに注意してほしいのである。

産業革命(Industrial Revolution)、これは封建制度から資本主義制度への転換の基礎となった技術的進歩と産業上の諸変革による経済、社会組織の飛躍的な変革のことである。1760年から1830年にかけて、イギリスの紡績機械の改良に端を発し、その他の欧米諸国がこれに続いた大革命であった。

当時の織機、紡績機、旋盤などの大型機械、水道の給水ポンプ、陸海の交通機関の動力は蒸気機関であったが、1870年代には、ドイツの技術者ウェネル・ジーメンスによって電動機が開発され、使用されるようになったのである。

このような時代に機械を設計しようとすれば、その機構(mechanism)のすべてを自分の頭で考えて作図しなければならず、大変な苦労を強いられたのである。今日、機構学と呼ぶ学問で、現代人が応用しているものは、その成果の集成である。
以下、ローコスト自動化を具体的事例によって述べる。

●ファインメカニズムのすすめ
最近、ファインケミカル(Fine Chemical)、ファインプラスチックス(Fine Plastics)などファインの頭についた単語をよく見聞きする。日本技術士会の仲間でファインメカニズム(Fine Mechanism)という単語を使用している人がいて、その考え方に全面的に賛成している私は、積極的に、この単語を使用し、製品、合理化改善において具体的事例を実証中なのである。

まず、ファインメカニズムの定義は次の通りである。
「高精度、高速度、高密度の条件を満たしている機構、機械装置のこと」
 初めに、この条件にかなう、簡単な具体的事例で解説してみることにする。
 機械装置として、一定の距離を往復するスライドテーブルを設計することとし、次の2例にて、その内容を比較してみる。

第一は、駆動をモータ、カム、スプリングなどで実施、図6のスライドテーブル上にアームを出し、この先に、ベアリングを嵌入したピンを固定する。また、モータ軸にテーブルストロークAmmの段差をもつカムを嵌入し、カムの外周が、ベアリングに当たるように組立てる。さらに、スライドテーブルの適当な場所(図ではピンの頭)からモータ側にスプリングで引張り、常にベアリングがカムに当るようにする。

この機構で、モータを回転すれば、スライドテーブルは、カムにならってAmmストロークの往復動を行うことになる。モータにクラッチ、ブレーキをつけ、1回転1ストロークをさせたり、カムの形状によって、早送り、早戻しなどの動きをさせることができる。
カムをリンク機構にしても、同様ストロークが得られることは勿論である。

第二は、図7の構造により、スタート押釦を押すと電装箱内のリレーが作動、空圧用電磁弁を通して、空圧シリンダに空気が流れ、スライドテーブルをストロークAmm移動、LS(リミットスイッチ)ONでリレー作動、電磁弁切換、空圧シリンダ反対側に空気が入りスライドテーブルAmm戻り移動、LS,ONで停止になる。空圧シリンダ使用のため、空気圧縮機、空気コントロールユニット(3点セット)の必要なことはいうまでもない。

いま、ふたつの簡単な例で、装置自動化を述べたが、前者が加工部品が多いものの、後者は要素、要因数が多く、動作に至る工程が多いだけサイクル時間がかかり、ルッサーの法則により信頼度が、前者に比較して低下することになる。

いうまでもなく、ふたつの構想には、夫々長所、欠点があり、簡単に優劣つけかねるが、開発の条件により、どちらの構想でも抵抗なく採用する柔軟な考え方が求められる。しかし、最近の傾向は、インスタントラーメンに代表される手間ひま不要論多数派時代、売っているものは利用すれば良いと考える人が多い。そのため、設計は市販している要素を並べる仕事のようになっているので、産業革命以来先人の苦労した業績の「機構学」の見直しを提唱している理由である。これが、温故知新なのである。

次は、ファインメカニズムの具体的事例である。現在のようにメカトロ(機電一体)時代ではなく、駆動源は電動機(モータ)のみという条件で装置を開発する時代の設計者たちは、機構学の中で見られるいろいろなメカニズム、すなわち、カム、リンク、歯車などを自由に駆使して、あらゆる機械装置を開発してきた。その代表的な例は、カム式自動旋盤である。今回は、「ガータースプリングの組立装置」について詳述する。

自動車をはじめとして、あらゆる機械装置に多用されている オイルシール(写真1 )、この内側には軸を締付ける目的にて嵌入されているコイルスプリングがある。
これは次のような作り方で製品になる。まず、別途設備されたコイリングマシンにより、図7に示すような密着巻きにコイリングして、最後の数巻を勾配に巻いておく。

次に、このスプリング1の端部2と他端3を図8下図に示すようにネジ込み円形に組立てると完了である。この作業は、従来、女性の手で一つ一つ組立てられていたが、オイルシールの需要が急伸してくると、当然のことながら、自動組立の必要が出てきたためドイツ、日本の機械メーカが自動組立機の開発に着手、各工場で使用されるようになった。
しかし、この組立工程は単純、簡単に見えるが、実は非常に難しく、販売されている機械は高価なものであった。そこで、これの小型、軽量、ファインメカニズムを目指した装置を開発したのである。

ここに示す機構(図9,10、11)は、昭52-153287の特許になっているアイデアである。人間の指先で実施する動作およびその順序をカム、ラック、ピニオン歯車に変えて、小型モータ1台で全工程を完了するメカニズムである。これだけの工程を空圧シリンダ方式で考えたならば、その機構も複雑化し、大型で、高価な機構になったはずである。

最近のように機械要素が規格化し、カタログによって、苦労せずに選択、使用できるようになったために、設計者が安易にそれらを整列、編集して作図する傾向になってきた今日、産業革命の昔を思い、頭を使ってメカニズムを考える努力、しかも、さらに高精度、高速度、高密度を追求するいわゆるファインメカニズムの開発に向けての努力を実行に移すことが、現代の開発設計者に要求されているものと考える。

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