ワンポイントアドバイス
技術文書の中にわからない専門用語が出て来たら,無視しろ。それなしでも意味は十分に通じる。(Mr.クーパーの法則)
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レポート
全員参加生産保全・TPMの効果
経営・技術コンサルタントの選び方 「コンサルタントとは顧客から数字を聞いて,それをつき返す不思議な人である」(マグドナルドの法則)
ゴミ無し汚れ無し(清掃・点検)の目的と効果
フランクリンの経験則
CARLOS GHOSNの日産改革 (技術士・中田賢治)
ゼロサムと付加価値の相関 技術士 中田賢治
書は知識の泉・目から鱗(うろこ)が落ちた
躾が第一で進める5S運動
CARLOS GHOSN(カルロス・ゴーン)の日産改革 (中田技術士報告)
生産活動における理論と実践
10%のコストダウンは売上2倍に相当する利益を生む                                     技術士 中田賢治
フランクリンの経験則
Robert Lusser(ロベルト ルッサー)の法則 技術士・中田賢治
企業の生き残りを左右する情報の質、量及び速さ
独自性について考える
ローコスト・オートメーション(Low Cost Automation)LCA 経費、費用のかからない自動化機械、装置
付加価値は企業の社会に対する貢献度のバロメーター・生産を示す指標
リコール問題について考える
売れる新商品開発の一方式(重要10項目提案)
「故障ゼロ達成の改善ポイント」
道徳教育と教育勅語について
超高品質の時代 (PPMからPPBへ)
PPM時代の信頼性とリコール問題
イグアスコーヒー社(ブラジル)の桜について
「躾が第一で進める5S運動」
日本の自動車工業の創成期に関与して
PPMからPPBへ (超高品質の時代)
ゴミ無し汚れ無し(清掃・点検)の目的と効果
新商品開発の進め方指南
桜咲く・・・の報告が届いた
今、何故また5S運動なのか(5Sと改善)
工業移住者協会(ブラジル)機関紙「なかま」への寄稿
急進する中国自動車産業(中国問題レポートNo.3)
中国の製鉄産業の現状(中国問題レポートNo.2)
中国の環境汚染問題を考える(中国問題レポートNo.1)
日米自動車工業の創成期に学ぶ
経営改善指南(こうすれば利益がでる)
日産 売上高、利益とも最高
先入観排除の具体的方法
製造業の新しい芽 新5S運動  
技術革新・最先端技術と翻訳、語学産業
中南米に於ける新5S運動の現状
日本青年会議所及び大学生への講演サービス
CARLOS GHOSN(カルロス・ゴーン)の日産改革 (中田技術士報告)
安いコストで完全に殺菌・滅菌する・・・ PURESTER・微酸性電解水製造機とはなにか?
PURESTER・微酸性電解水製造機(補足)
経営・技術コンサルタントの選び方 「コンサルタントとは顧客から数字を聞いて,それをつき返す不思議な人である」(マグドナルドの法則)
ODA改革(技術援助)のための一提言 「技術移転は人質移転」中田語録 
「故障ロス5つの改善ポイント」(設備投資を合理的に行う為に)
イグアスコーヒー社・Forbesの2003年ブラジル優良200社(NO.25位)の栄誉に! (2000年にはEXAME(経済誌)「ブラジル優良企業100社」に選ばれる)
経営・技術コンサルタントの地球表裏情報(NO.2) 「日本・ブラジル、子供の躾について考える」
経営・技術コンサルタントの地球表裏情報(NO.1) 「糸の切れた凧が無事戻ってきた」
PURESTER・微酸性電解水を知っていますか?
元気・知恵、出せ!頑張れ!中小企業
ISO 9000 と 経営改善(新)
コンカレント・エンジニアリング(Concurrent Enginnring)NO.1
開発に係わる人財(人材)育成
若き設計者に期待する(キーワードは「素直」)
ブラジルでの経営・技術改善(社長向き読み物)
不況時の設備投資の有り方(設計担当者必読)
教育勅語(きょういくちょくご)について考える(親孝行・躾がすべての基本)
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■  急進する中国自動車産業(中国問題レポートNo.3)
経営・技術コンサルタント 中田賢治
2006年3月4日、NHK報道スペシャルにおいて主題「中国・自動車立国を目指せ」(日本に追いつけるか?)が放送された。
1977年以来、中国は勿論、香港、台湾、などのアジア諸国、ロシア、東ヨーロッパ諸国、インド及びブラジル、アルゼンチンなど、数多くの国々に、日本の物造り支援を実施してきた技術者として、いろいろな意味で驚愕、感心し興味のある内容であった。「実業のブラジル」においても、新年に入って、「カルロス・ゴーンの日産改革」、「日米自動車産業の創成期に学ぶ」の自動車関連を取り上げ、さらに、中国問題レポート三部作を特集し、既に「中国の環境汚染問題を考える」を掲載、「中国の製鉄産業の現状」と「急進する中国の自動車産業」の報告を約束している。
                    
トヨタ自動車の渡辺捷昭(かつあき)社長と米ゼネラルモーターズ(GM)のリチャー・ドワゴナー会長が先週、米ミシガン州デトロイトでトップ会談を行ったことが一月十七日わかった。3月に期限が切れる、燃料電池など先端環境技術での業務提携の扱いなどを協議し、引き続き協力関係を強化することなどで一致した模様だ。今後は燃料電池の共同開発などの具体策について、実務レベルで協議を進める。(2006年 1月17日、読売新聞)

最近の年間自動車製造数でトヨタ自動車が9月、巨象GMを抜くことは確実視されており、コストカッターと異名をとるカルロス・ゴーン社長によって不死鳥のように業績回復、復活した日産自動車、2005年度のカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれて気を吐くホンダなど日本勢の活躍が報道されている。

ヘンリー・フォードがT型フォードを完成させたのが、1909年、トヨタがカローラを完成させたのが1966年のことである。つまり、スタート時点で約60年遅れていた。このニュースは、日本の自動車産業が、40年(2006-1966)かけて、ようやく、欧米に追いついた証である。
NHK報道によれば、中国が国策として、ハイブリッドカーの独自開発を推し進め、トヨタがプリウス中国工場を立ち上げ、本田にも進出要請していること、フォルクスワーゲンが技術協力していること、日本部品メーカーの中国への進出、技術開発方法、世界市場への売り込み努力、技術者の意気込み、など非常に興味ある内容である。
以下、急進する中国自動車産業の現状と展望について、独自に集めた情報を加えて分析し詳述する。

● 中国自動車市場の現状

中国の自動車市場がいよいよ軌道に乗ってきた。自動車は古くから総合産業と呼ばれている。部品まで含めると非常に裾野の広い産業であり、経済成長に貢献する。一方、消費面では豊かさの象徴であり、これも経済成長に貢献する。GNP1000ドルでチョコレートが売れ始め、GNP3000ドルで乗用車が売れ始めるといわれる。
ちなみに、今日の中国で、GNP3000ドルを超えている都市は北京と上海のみである。どんなレベルの車が走っているかによって、その国の経済力がおおよそ分るのであり、換言すれば、車の普及率はその国経済の成熟度を表している。従って、発展途上国にとって自動車産業の育成は重要な政策であり、中国も例外ではない。

05年の中国国内の自動車販売は572万台あまりで、日本の585万台に次ぐ世界第3位の規模になったという。中国自動車工業協会は当初、592万台と発表して「日本を抜いて世界2位」と騒がれたが、輸出台数を国内にカウントしていたことがわかり、訂正したら日本よりやや少なかった。しかし、中国は前年比で12%も伸びており、横ばいの日本を06年に抜くのはまず間違いない。
自動車市場の急拡大に対して、先行する独VW(フォルクスワーゲン)や米GM(ゼネラルモーターズ)に追いつこうと、日本のトヨタ、日産、ホンダが広州市に本格工場を構え、広州は「中国のデトロイト」の様相を強めている。

販売シェアを見てみる。外国勢の中でも独フォルクスワーゲン(VW)が優位なシェアを保持していた中国自動車業界。05年はその構図に変化が現れた。米ゼネラルモーターズ(GM)の現地法人である上海GMが、VWの合弁会社2社を制してシェアトップに躍進。新型車種を相次ぎ投入した日本勢もシェアを大きく伸ばした。自主開発を全面に打ち出す中国勢も、業界での勢力を伸ばし始めている。中国の自動車業界はまさに戦国時代に突入したといっても過言ではない。

2005年のシエアは、次のようになっている。上海GM(10.71%)、上海VW(8.78%)、一汽VW (8.55%)、北京現代(8.06%)、広州ホンダ(7.29%)、天津一汽夏利(6.82%)、奇瑞汽車(6.60%)、東風日産(5.65%)、吉利汽車(5.38%)、神龍汽車(5.04%)、その他(27.13%)になっている。
トヨタ自動車は、2005年1─9月の中国での自動車販売台数が10万台を超えたことを明らかにし、その上で、2005年の中国での年間目標販売台数を、従来の14万5500台から15万台に引き上げている。

中国の自動車メーカー最大手である第一汽車との合弁会社、FAWトヨタ・モーター・セールスの幹部は、自動車業界フォーラムの際にロイターに対し、「現在の状況を考えれば、2005年の販売台数は15万台に達するだろう」と語った。さらに、「多くの受注を抱えており、現時点でのわれわれの主な仕事は生産増と納期短縮だ」と述べた。 トヨタが、第一汽車との合弁会社の販売台数見通しを引き上げたのは今年に入って2回目。ホンダは中国・東風汽車との乗用車合弁会社である東風本田汽車(湖北省)の生産能力を2006年初めに従来の年3万台から12万台に引き上げた。

投資額は約28億元(約360億円)で、建屋を現在の3倍余りに拡大し新鋭設備を導入。フル操業時の要員は2800人となり、従来の930人から約3倍に増えた。
東風本田は2006年4月からホンダでは広州本田汽車(広東省)に次ぐ2番目の中国4輪車工場として稼動、CR-Vを生産している。ホンダは、12万台への能力引き上げに対応して「シビック」を含む新たな機種を投入した。

しかし、中国で生産するメーカーは、米国や日本がこれまで体験したことのない深刻な課題を背負っている。公害などの環境汚染である。(これについては、本レポート3月号「中国の環境汚染問題を考える」(中国問題レポートNO.1)で詳述した。
加えて道路整備、駐車場整備、交通事故対策、ガソリン需要問題の早期解決など、自動車の拡大に伴う環境整備も急がねばならない。日本の自動車メーカーの省エネ、低燃費技術は世界一といわれる。

例えば、プリウスは初代モデルが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として発売され、世界中で高く評価された。2003年9月には2代目が登場し、エコとパワーを同時に進化させる「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」をコンセプトに開発した新しいハイブリッドシステムを搭載し、世界最高レベルの燃費35.5km/Lを実現している。これを中国で「環境に優しい車」としてアピールし、中国のユーザーに受け入れられる工夫をしている。さしあたっては、ハイブリッド車の普及が注目されるが、業界関係者に聞くと、中国の知的財産権の保護が、まだ不備なことから、ハイブリッド車の共同開発や本格生産は制約されるという。

しかし、中国の大気汚染は、酸性雨という形ですでに日本にも影響を与えている。マイカーブームがこれに輪をかけることは明白。中国の政策当局は、100社以上といわれる国内メーカーの再編を目指しているが、それと同時に、低公害車への大胆な優遇措置や都市部の公共交通網の整備なども進めるべきである。
先進諸国も、これまでの経験を可能な限り提供し、日本が高度成長期に犯した過ちを、繰り返してほしくはない。

● 中国自動車産業の商品開発と市場開発

これに関して、自動車先進国との比較で特徴的な差が見られる。
(1) 商品開発について
商品開発期間、費用を圧縮し実効を挙げるために、先進自動車企業の技術、特に特許切れの技術を有効に使い、徹底的に改良し自社独自の製品に仕上げている点は注目に値する。

欧州自動車メーカーの技術者は、ボンネットを開けて、エンジンを外観だけ見ると、模倣、改良で作っているとは、信じられないと話した。中国・トヨタの社長、ホンダの関係者(上席研究員)も、共々、中国・上海に於ける自動車展示会場で、「中国の自動車産業は、日本に5-6年で追いつく勢いである」と語っている。これは、展示会場でマイクを向けられたときの発言であり、外交辞令(相手に好感を抱かせるように、表面を繕っていう言葉、おせじ)であろう。

(2)低価格で発展途上国をターゲットに。
中国の販売戦略は非常に明確である。低価格設定で中国国内の需要拡大と発展途上国への輸出である。具体的には、中東、アフリカ諸国そして中南米諸国などである。
最近、北米、デトロイトで開催された自動車展示会において、中国・吉利自動車は独自開発のCK型自動車を出品し、その価格を一万米ドル以下に設定し注目を集めた。プエリトルコの自動車デーラーは早速、吉利自動車と販売契約を結び「45年間の販売経験から、この車はプエリトルコで売れるだろう」と話した。

● 中国自動車産業の技術と政策

周知のように、人類のもの作り歴史は、物真似(模倣)の歴史である。自動車産業も例外ではない。世界の工学系の大学で取り上げる「機構学」はイギリスが発祥の地である。
18世紀中ごろから木綿糸をつむぐ紡績の機械化がすすみ,良質の木綿糸が大量に生産されるようになった。この間,ワットが改良した蒸気機関が動力として実用化した。いっぽう,布を織る工程の機械化はおくれたが,動力織機の発明で解決された。このように,木綿工業からおこった産業革命は,製鉄業や交通機関などにおよんでいった。このような、産業で培われた機械、装置のからくりを纏めた学問が「機構学」である。

「自動車産業」は「総合産業」といわれる。自動車を作るためにあらゆる産業が総動員されているからである。中でも、自動車部品を加工する工作機械は自動車産業の発展と密接に関係があり、また、工作機械の発展は、切削工具、切削油、測定具、軸受(ベアリング)、オイルシール等の急速な発展につながっている。

1966年4月、日産自動車がダットサン・サニー、同年9月、トヨタ自動車がカローラを発売し、日本における本格的な自動車時代が始まった。1959年、大学を出た筆者は総合機械企業、新潟鐵工所の工作機械事業部に席をおいていた。カローラ発売の3~4年ほど前、当時、業界九位の総合商社の安宅産業を通して、トヨタ自動車の4気筒エンジン用クランクシャフト及びカムシャフトの切削専用機械ラインの注文が舞い込んだのである。

当時、残念なことに、日本は自動車の大量生産経験がなかった為、先進国米国にその技術を求め、技術提携に踏み切ったのである。相手の企業は米国・サンドストランド社、早速、設計係長が渡米し、機械の現状調査、情報収集後帰国、設計図の検証、チェック等が実施され、顧客トヨタ自動車との仕様打ち合わせ、見積その他詳細了解後、フルコピーによる試作機(カムシャフト及びクランクシャフト各1台)を完成し、トヨタ自動車・上郷工場(新エンジン専門工場)に納入したものである

1960年代、今日世界一になろうとするトヨタの自動車造りは模倣、コピーからの出発であった。躍進する中国自動車産業が先進諸国の技術を学ぶために、欧米、日本との技術提携、模倣、コピーをすることは当然にして、自然の流れであり何も問題ではない。
むしろ、日本などは、隣人でもある中国から長い歴史の中で有形無形の恩恵を受けており、これらの借財の一部を返済する好機と受け止め、欧米諸国とは一線を隔して出来るだけの技術協力をする必要がある。

 さて、今日の「中国自動車産業の技術と政策」と題してみたが、長年、物作り技術者として日本、海外の現場を歩き、多くの企業支援を実施し、企業及び大学の研究室、理化学研究所での研究業務、中小企業での試作研究をしてきた視点で見ると、中国の自動車作り技術は相撲で言えば、横綱と幕下、月とすっぽん (彼らは月とすっぽんほど違うThey are as different as day and night.)というのが筆者の本音である。

周知のように、自動車は2万点から3万点の部品から構成されており、「自動車産業の技術と政策」を本格的に論ずるとすれば、紙幅が足りないので、ここでは、報告を従来型エンジンとハイブリッドエンジンに絞って中国の自動車作り技術とこれを推進する政策について評価することにする。

(1) 従来型エンジンについて
中国自動車作り、開発のキーワードは、「特許切れ」、「改良」及び「7万元(100万円)」である。
1953年7月15日、長春第一自動車製場(一汽)が盛大に式典を行い、6名の青年共産党員が「第一汽車製造場定礎記念」と刻まれた白玉礎石を一汽中心広場に据えた。ここから一汽が正式に開業。中国の自動車産業の第一歩を踏み出し、長春市も「自動車の町」と呼ばれ始めるようになった。

ここで生まれたのが、中国第一号自動車がトラック「開放号」であった。技術はすべて友好国ソ連が供給した。1958年高級乗用車「紅旗」が開発され、合計206台作られたが、クライスラー及びルノーの技術によるものであった。日本の場合も創成期には、技術提携、模倣、改良そして開発、のルートを経て今日の地位を確保したが、中国も例外ではない。
最近、急進する上海華普自動車(徐剛会長、従業員1300人、平均年令24才)は1300ccから1800ccの5車種で、年25000台を出荷している。
ここのエンジンは、1970年に特許の切れたトヨタA型を改良したものである。
奇瑞汽車のACTECOは三菱自工製エンジンから生まれ、これを越えたという。天津一汽夏利はトヨタ自工技術がベース、天津トヨタが生産するTOYOTA8A―FE エンジンは、トヨタA型エンジンを基に、日中双方の技術協力によって中国市場向けに新開発された。以下、GM、VW、現代、ホンダ、及び日産などの自動車メーカー名が下につく中国自動車企業は夫々、これらの企業と合弁あるいは資本、技術提携して車を開発し今日に至っている。

(2)ハイブリッドエンジンについて
地球に優しいエコカー(低公害車)としてハイブリッドエンジンとは、エンジンとモーターという、二つの動力源を組み合わせたものを言う。
発進時はモーターのみ、加速時はエンジンとモーターを併用するなど、走行状況に応じてエンジンとモーターを効率的に使い分けることで、驚異的な低燃費、低排出ガスを実現する。走行中、ブレーキング時の制動エネルギーを回生することで充電するため、特別な充電システム等は不要。燃料はガソリンであり、使い勝手は一般のクルマと全く同じである。トヨタ・プリウスによって広く一般的なものとなった。

世界の自動車大手が注目する中国自動車産業の今後のカギは「エコカー」にある。中国国家発展・改革委員会(国家発改委)が2004年6月に打ち出した「自動車産業発展政策」では、小排気量車、ハイブリッド車などエコカーの開発を中国自動車産業育成のための基本方針として盛り込んでいる。続く原油高も、消費者の目を低燃費型車へと移らせる大きな要因だ。自動車メーカー各社は、中国でのハイブリッド生産に続々と着手しているが、中国のハイブリッド市場は産声(うぶごえ)をあげたばかり。今後の行く末を占う鍵は、政府の政策補助にあるといえる。

 トヨタ自動車の中国現地法人である一汽トヨタは06年1月、現地生産のハイブリッド車「プリウス(中国語名:普鋭斯)」の店頭予約受付を開始し、06年2月中に店頭販売を開始した。販売価格は28.8万元と30.2万元(本皮仕様)の2種類。中国の自動車市場では、30万元以上のモデルが高級車とされている。富裕層の高級車志向は非常に高いが、プリウスは完全に射程範囲内だと言ってよい。中国高級車市場の主役である欧米系のメルセデス・ベンツ、アウディ、BMWや、中国での高級ブランド戦略としてトヨタ、ホンダが投入したレクサス、アキュラの高級ブランドに対して、プリウスがどういった地位を確立するのか、また、プリウスの存在が中国の消費者の目にどのように映るのかが、今後注目される。

競合他社も、こぞって中国でのハイブリッド車市場開拓に向けて準備を進めている。中国市場で圧倒的なシェアを誇る独フォルクスワーゲン(VW)は05年9月、中国大手の上海汽車集団とハイブリッド車を共同開発していくことで合意した。上海VWが生産するMPVのトゥーランをベースにハイブリッド車開発を進め、08年6月までに小規模な生産を実現させる計画だ。トヨタと同様に、ホンダもハイブリッド車の中国への投入を検討している。

 中国勢も海外勢に後れをとるまいと必死である。中国の三大自動車メーカーである東風汽車集団は05年7月、自社開発したハイブリッドバスのサンプル車試験に合格し、長安集団が開発したハイブリッド技術搭載の「CV9」も、まもなくラインオフする。

 独自ブランド路線で、海外進出に攻勢をかける奇瑞集団と吉利集団も同様である。奇瑞集団は2006年下半期(7&&##35;8722;12月)にハイブリッド車「BSG」の発売を予定、吉利集団の傘下にある上海華普汽車は2005年11月17日、中国で初めて独自の知的財産権を有するハイブリッド車を発表したと新華社が伝えた。

このハイブリッド車は、上海華普の自社ブランドである「海尚305」をベースに、上海交通大学の技術(殷承良教授研究室)を応用して開発された。これと、平行して、上海華普は、上海の同済大学(尹教授研究室)にもハイブリッドカーの開発を委託し、両者を競わせる作戦である。

前者は、エンジンとモーター(1個)の直結型、後者は、エンジンとモーター(2個)を分離し、車輪にモーターを直結して駆動する方式である。
上海華普は、07年の上海国際汽車工業博覧会(上海モーターショー)までに小ロット生産での試作車を発表し、2010年の上海世界博覧会(上海万博)をメドに、3年内にハイブリッド乗用車の量産体制を構築することを目指している。

(3)ハイブリッド車ブームの問題点
 このハイブリッド車ブームには、いくつかの問題点もある。ハイブリッド車の投入は、時代の要請に即したものであるが、開発コストの高さや開発前段階の技術投入により、理想的な利益を得ているメーカーは数少ないという。要するに、中国でのハイブリッド車投入は、まだ手探り状態にある。また、消費者側の問題もある。プリウスの価格が高所得者層の射程範囲とはいえ、一般の消費者にとっては、まだまだ、高嶺の花。走行などに関するスペックが同レベルである車種の販売価格と比べれば、その開きは大きい。

 こうした状況をみると、ハイブリッド車が中国で大衆化されるために、ある一定の過渡期が必要である。専門家は、ハイブリッド車が大衆化されるための必要条件として、国の政策上の保護を挙げる。中国政府は「自動車産業発展政策」の技術政策の中で、小排気量の自動車開発、ハイブリッド車、ディーゼルエンジン技術、新型の燃料自動車の開発を奨励することを明確に示しているが、メーカーへの補助など具体的な政策実施案は、現在のところ発表していない。

 消費者に対しても同様で、ハイブリッド車を購入しやすいような国の補助制度はまだ確立されておらず、今後の発表が待たれる。日本の政策では、ハイブリッド車などの低公害認定車を購入した場合は、自動車税の軽減や、自動車所得税の減額などの優遇税制が適応される。また米国では、ハイブリッド車購入時に、3000&&##35;8722;5000ドルの補助金を受け取ることができる。
メーカーと政府によるハイブリッド車の開発及び普及推進、消費者のハイブリッド車への理解。この3つがマッチして初めて、ハイブリッド車の中国での大衆化が実現されることになる。

● 自動車産業の品質信頼性
具体的には、「不良ゼロ・故障ゼロ」についてである。これまで、詳述のように、中国自動車産業は欧米、日本に追いつけ、追い越せ、低コストと発展途上国の市場開発を急ぎ、薄利多売、製造台数で世界を目指す作戦のようである。自動車は総合産業、世界中から部品を集めて組み立てればOKという簡単なものではなく、構成部品の品質の信頼性を極限まで高め、それを維持することが大切なのである。

かなり前に、韓国の現代自動車が大衆車ポニーを米国に輸出開始まもなく、大量のリコール(商品回収や無償修理を行うこと)が発生し、輸出にブレーキがかかったことがある。私は仕事柄、リコール、事故や品質信頼性に関する、各業界の情報を数多く持っているが、ここでは、宇宙開発ロケット、自動車および電機・機器に関する5件の具体例について報告する。

(1)アメリカNASAスペースシャトル爆発。
1986年1月。スペースシャトル・チャレンジャーが発射直後に大爆発。7人の乗組員が全員死亡。原因は低温によるOリングの弾性喪失や設計ミスで燃料漏れ。

(2)現代自動車、米国市場で大規模リコール。2005年8月14日。2002年と2003年型のエントラとソナタ、XG350、テイビュロンモデル24万6000台に対しリコールを断行。衝突時、燃料漏失で火災誘発の可能性。

(3) 現代自動車、2005年8月30日。リコールを実施。2006年型ソナタ、3万6000台。米国高速道路交通安全危局(NHTSA)の調査過程で運転席のベルトの欠陥が判明。

(4)トヨタ自動車レクサスのリコールを国土交通省に届出。
対象車種は平成17年7月27日から12月27日までに製造された高級車レクサス4車種(GS430,GS350,IS250,IS350)の1万1109台のリコール。シートベルトの巻取装置に不具合。

(5)松下電器産業石油温風器とヒーターをリコール。 
2006年4月12日。1985年から1992年製の石油温風器、石油ヒーターに事故に至る危険性あり。一酸化炭素による死亡事故に至る恐れ。
原因はエアーホースの締め付け部品の欠陥。
 
最近の物造りにおける品質管理目標は「不良ゼロ・故障ゼロ」と云われる。日本における自動車産業の創成期は1966年4月、日産のダットサン・サニー、同年9月、トヨタのトヨタ・カローラ発売の頃であるが、この当時の品質管理は「不良率○○%」であった。しかし、最近は「不良率○○PPM」になっている。その根拠を簡単に説明する。

元々、ppm(parts per million )は物質などで微量を表す単位で、100万分の1を表わす。電子部品、自動車部品など高信頼性や安全性を要求される部品では、その不良率を0.0001%、すなわち100万分の1の低い単位まで保障することが要求されており、このための管理活動を一般にPPM管理と呼んでいる。

 周知のように、1944年、ドイツの科学者、フォン・ブラウン博士がV2号ロケット開発に成功したが、軍事目的であった。ドイツ中央の山岳地帯の地下工場で、300-900本のロケット(V1)が作られ、1120発がロンドンに向けて発射された。その結果、511人のロンドン市民が死亡、約6000人が重症を負ったのである。命中率が悪く、軍事施設でないところに落ちる信頼性の低いロケット。

 責任者のフォン・ブラウン博士は弟子のロバート・ルッサーに命中精度不良(予定通り飛ばない。故障)の原因を調査して、報告するように指示したのである。
「個々の部品が持っているのは、わずかな欠陥であっても、それらが組み込まれたロケットの信頼度(信頼性)は、その欠陥の掛け算になる。」
これがルッサーの法則(信頼性の法則)と呼ばれ、式で表現すれば次のようになる。

R1=r1xr2xr3x・・xrn ---------------------(1)  (r1、r2、・・rnの積)
R2=rn -------------------------------(2) (rのn乗) 
(1)式:構成要素の信頼性が全部異なる場合
R1:製品の信頼性
r1、r2、r3・・rn :各要素(n個)の信頼性
(2)式:構成要素の信頼性が全部同じ場合
R2:製品の信頼性
r:要素の信頼性
n:要素の数

さて、実際の物作り現場において、不良ゼロ、故障ゼロを目指す品質管理を実現する為には、その製品を構成する要素(部品)の信頼性をあげる以外にない。現実には部品の信頼性は全部違うので、(1)式を使うが、計算が複雑になり、電卓で簡単に算出できないので「スキル管理」の創始者・中井川正勝先生が(2)式を用いて「信頼性の法則」を分かりやすく説明している。

 ここに、要素数(部品点数)1000個で構成される装置がある。この要素の信頼性は99.900%(1000個作って1個不良)レベルと仮定すると、(2)式によって
R2=rn = 0.9991000---(rのn乗、0.999の1000乗)
=36.79
このことは、1000個作って1個不良の出るような部品を1000個組み付けた機械装置の信頼性は約37%ということになる。
ルッサーの法則は、ロケットの命中精度改善目的で誕生し、アポロ11号成功に貢献、戦闘機の不良ゼロ・故障ゼロ達成に、更に最近では自動車の品質信頼性の改善に寄与している。

 最近の物作りは、ジャスト・イン・タイム(JIT:必要なものを、必要な時に、必要な数作る)、多くの企業の共同作業によって成立する。些細な納期不良、品質不良も許されない。
例えば、広州本田汽車有限公司では、1日、100台のアコードを生産するが、品質は日本国内と同等目標である。部品、要素の80%を中国国内で調達しているが、この内の70-80%は中国に進出した日系企業からのものになっている。そうしなければ、現状では、日本と同品質、信頼性の高い車にならない。

中国が、地球と人に優しい車造りに成功するためには、中国にある約3万社の部品製作企業をPPM管理の出来る企業に育てることが急務である。
先述、現代自動車のエントラとソナタのリコール(約25万台)の原因が「衝突時、燃料漏失で火災誘発の可能性(燃料タンク強度不良)」、トヨタ自動車レクサスのリコールが、「シートベルトの巻取装置の不具合が原因」という事実が、部品、要素のPPM管理の必要性、重要性を教えている。

信用を得る為には時間がかかるが、信用を失う為には時間は要らないのである。

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